日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」(株式会社MFS)を運営する塩澤崇氏が、住宅ローンにまつわるお金の新常識を解説した決定版『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』を5月に上梓した。これから借りる人だけでなく、すでに借りている人が読んでも役立つアドバイスが満載の本書は「もっと早く出合いたかった」と反響を呼んでいる。今回は、東京都内でおトクに家が買える「穴場」エリアについて、塩澤氏に伺った。(聞き手/『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者 安達裕哉氏、構成/ダイヤモンド社 根本隼)

【金融のプロが教える】東京都内でおトクに家が買える「穴場」エリア・トップ3Photo:Adobe Stock 写真はイメージです

資産性重視なら「京浜東北線」か「埼京線」の沿線

――住宅ローンのプロである塩澤さんの視点で、東京都内で家を買うときの「おすすめエリア」はありますか?

塩澤崇(以下、塩澤) 皆さんの関心が非常に高い質問ですね。

 まず、東京都内の不動産価格がここ数年上がり続けているので、一般家庭が購入できるエリアはかなり限られてきています。

――何億円もする物件の購入を即決できる人なんて、ほとんどいないですもんね。

塩澤 そうなんです。いわゆる「湾岸エリア」や「都心部」にはいい物件がたくさんありますが、高額すぎて手が出ないという方も多いかと思いますので、今回はそれ以外のおすすめエリアをご紹介します。

 選ぶ軸としては、大きく2つあります。1つが「資産性重視」、もう1つが家計にゆとりを持たせる「予算重視」です。皆さんには、より腹落ち感がある方を、選んでいただければと思っています。

 まず「資産性重視」の軸だと、物件価格が手に届く範囲で、なおかつ今後の値上がりも期待できるのが、京浜東北線と埼京線の沿線です。具体的な駅でいうと、京浜東北線なら王子や大井町です。

――なぜ、特に王子と大井町がおすすめなんですか?

塩澤 ひと言でいうと、駅に近いエリアで「再開発」が行われるからです。

 再開発によって駅近エリアに新築マンションが建設されると、それが不動産価格のけん引役となって、周辺相場を引き上げていくんです。

――なるほど、おもしろいですね。

塩澤 現在の予定だと、大井町駅周辺にはかなり大きなビルやマンション、商業施設が建つそうです。なので、資産性という観点だけでなく、生活の利便性においてもメリットがあるはずです。

 王子は、北区の区役所が現在の京浜東北線の西側エリアから、東側に移転する予定になっています。私は、今の区役所の跡地にはおそらくマンションが建つと思っていて、それが周辺の不動産相場を引き上げていくはずです。また、移転先のエリアも、再開発によって商業施設などができていくと思います。

 王子の再開発はまだ先の話なので、現時点では大井町ほど物件価格は上がっていませんが、「資産性」という意味では今後注目のエリアだと考えています。

――埼京線でおすすめの駅はありますか?

塩澤 板橋駅ですね。ここも、再開発の大きなマンションが駅前に建つ予定で、もう既に工事が始まっています。

 埼京線の板橋駅は、隣が池袋なのでもともと人気ですが、さらに再開発でマンションが建つわけですから、今後の値上がりが期待できるんです。ちなみに、駅から少し歩けば、安い中古マンションがまだあったりもしますよ。

予算重視なら「城北デルタ」

――もう1つの軸である「予算重視」では、どのエリアがいいでしょうか?

塩澤 それでいうと「城北デルタ」がおすすめです。

――初めて聞く名称ですが、どのあたりですか?(笑)

塩澤 私が名付けました(笑)。どこかというと、「赤羽・池袋・田端」を結んだ三角形の内側のエリアですね。たとえば、西巣鴨のような都営三田線沿線や、駒込やそれより少し北側も、この城北デルタに入っています。

 このあたりは、もちろん高額な物件がありますが、割安な物件もまだ結構あるんです。さらに、この「城北デルタ」は、東京・新宿・池袋といったターミナル駅へのアクセスが便利です。

――確かにそうですね。

塩澤 このエリア内なら、埼京線だと池袋や新宿まで10~15分で着きますし、都営三田線なら、大手町まで乗り換えなしで行けます。巣鴨からだと、大手町まで10分ちょっとです。また、京浜東北線なら東京駅まで1本です。

 しかも、駅から多少離れたところに住んでいたとしても、王子と大塚の間を走っている都電を使って、JRの駅にすぐ出ることができます。また、このエリアの中央付近には明治通りが走っていて、バスも便利です。

――交通アクセスにスキがないですね。

塩澤 あとは、京浜東北線の西側は高台なので、水害リスクにも対処できますし、下町エリアなので物価がリーズナブルなのもポイントです。

 いろいろと好条件がそろっているので、1年後には人気になって値段が上がっている可能性もありますね。

(本稿は、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』の著者・塩澤崇氏へのインタビューをもとに構成しました)

塩澤崇(しおざわ・たかし)
株式会社MFS 取締役COO
2006年、東京大学大学院情報理工学系研究科修了(専攻:数理情報学)。同年よりモルガン・スタンレー証券株式会社にて住宅ローン証券化ビジネスを推進。2009年、ボストン コンサルティング グループに入社し、金融機関向けの戦略コンサルティングに従事。2015年9月より、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの取締役COOとして金融機関提携・オペレーション・事業提携・広報を管掌。全国紙でのコメント掲載やTVへの出演実績も多数。『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』が初の著書。