銃規制に反対してきたトランプ氏が銃撃される皮肉
池上 11月の米大統領選挙へ向けて注目が高まっているさなかの7月13日、集会で演説中のトランプ前大統領が銃撃され負傷するという驚くべき事件が起きました。トランプ氏はまだ共和党の大統領候補に選出される前の段階でしたが、事件から2日後には共和党の党大会に出席。負傷した耳にガーゼを巻いたまま登場し、正式に大統領候補に指名されました。
増田 党派対立が激化する米国では、憎しみの噴出を象徴するような事件がこれまでにも起きてきましたが、ついにここまできたかと。聴衆に死者が出たことは残念でなりませんが、トランプ氏が軽傷で済んだことは不幸中の幸いでした。
池上 共和党は政治力を持つ全米ライフル協会を大きな票田としてきましたが、これで銃規制に対する姿勢に変化があるのか。銃規制に強く反対してきたトランプ氏がこうした事件の被害者になるとは、何とも歴史の皮肉を感じます。
増田 米国で以前、銃規制派、規制反対派の両方を取材しましたが、それぞれに主張がありますし、銃に対する歴史や文化もある。そう簡単に立場を変えることはできないでしょう。過去にも、銃乱射事件は何度も起きていますが、それでも変わりませんでしたから。
銃撃事件を受けて、米国人の半数に上る無党派層がどう動くか、トランプ氏への同情票が増えるのではと注目されていますが、事件をもって考えを変える人はそう多くはないでしょう。
池上 党大会でトランプ氏は団結を訴えて、これまでとは違う様子だったと報じられていますね。
一方、バイデン氏も事件を受けてホワイトハウスの大統領執務室から国民へ向けて「この国の政治の温度を下げる必要がある」と発信し、政治的な立場が違う人たちとの対立や分断をこれ以上深めないよう、呼び掛けました。