カラス写真はイメージです Photo:PIXTA

カラスは3月頃に巣を作り(=営巣)、7月頃にひなが親元を離れる。その間、配電トラブルや威嚇行動に悩まされる地域も少なくない。その原因と対応策をカラス研究20年、カラス対策のエキスパートが解説する。※本稿は、塚原直樹『ヒトとカラスの知恵比べ 生理・生態から考えたカラス対策マニュアル』(化学同人)の一部を抜粋・編集したものです。

カラスに営巣されても
むやみに撤去してはいけない

 カラスの営巣に関するお悩みは多い(図3-29)。営巣は、配電トラブルやヒトへの威嚇などを引き起こす。営巣させないための対策はかなり難易度が高い。営巣箇所は高所であることなどから、物理的に防ぐことは難しい場合が多い。ここでは、不幸にも営巣されてしまったあと、どのように対処すべきかについて紹介したい。

図3-29:カラスの巣同書より転載

 まず、むやみに撤去することはお勧めしない。そもそも、巣に卵がある場合の撤去は、市町村の許可が必要であることが「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」いわゆる鳥獣保護管理法で定められている。

 そのため、勝手に撤去することは違法となり、個人の判断で撤去はできない。行政の許可を得たうえで撤去する場合においても、巣があることでもたらされる危険度や緊急性を熟慮したうえで撤去を検討すべきだ。

 もちろん停電などの事故を引き起こす可能性がある場合は撤去もやむを得ない。ただ、カラスは一度ここだと決めると、とことんその場所に執着する。その場合、突貫工事で巣をつくるため、巣材がポロポロ落ち、余計に事故を招きやすくなることもある。

 それから、ヒトへの威嚇を誘発することにもつながる。子育て時に近づくだけで威嚇をすることもあるのだから、巣を撤去されれば当然カラスも怒る。撤去後1カ月以上、付近を通行するヒトをのべつ幕なしに攻撃していたという話を聞いたこともある。

 時期を待てば、いずれカラスは巣からいなくなる。巣の撤去のタイミングはカラスがいなくなったあとでもよければ、それまで待つことが望ましい。それまでは温かくカラスの愛情深い子育てを見守るのはいかがだろうか。

カラスの威嚇行動の回避法と
威嚇された場合の対処法

 子育て中のカラスの威嚇行動から身を守るにはどうしたらよいか?一番は、巣のそばやカラスのヒナのそばには近づかないことだ。とは言っても、家の近所にある巣ならヒナの鳴き声などで巣の場所は把握できるだろうが、はじめて訪れる場所などではそうもいかない。事前に威嚇行動を避ける術はあるだろうか。

 じつは親ガラスは威嚇行動の前に、必死にメッセージを発している。そのメッセージにヒトが気づいていないだけなのだ。そのメッセージとは、親ガラスのヒナやペアの連れに対する警戒の鳴き声(QRコード9)と、ヒトに対する威嚇の鳴き声(QRコード10)である。なお、ここではハシブトガラスの鳴き声を紹介する。

QRコード9同書より転載
(9)警戒コール
https://youtu.be/CKd0ZKJwjd0?si=evDFBn_WeCZEId9C
QRコード10同書より転載
(10)威嚇コール
https://youtu.be/ue2cuLjmzRM?si=Qj1rzKZQYd3nxWig