基本的に親ガラスは、ヒトを傷つけてやろうと積極的にヒトを威嚇してくるわけではない。ちょっと驚かして、その場から追い払いたい、もしくはヒナへの注意を自分に向けたいだけである。カラスも自分より大きなヒトに対して恐怖心があるため、正面からではなく、後頭部から迫ってくる。カラスもかなり興奮状態のため、目測誤って、運悪く鋭い脚の爪が、ヒトを傷つけてしまうこともある。

 それを守るための帽子である。また、傘を差していれば、後頭部の防御に加え、傘にカラスの翼が当たるのを怖がるため、襲ってこない場合もある。同様に翼が当たることを利用した対策として、バンザイポーズがある。NPO法人札幌カラス研究会の中村眞樹子氏が考案した方法だ(図3-30)。両腕を上げてバンザイポーズを取りながら通過することで、カラスは翼がヒトの腕に当たるのではと思い、威嚇行動をためらわせるのが狙いだ。

図3-30:威嚇行動を回避するバンザイポーズ同書より転載

被害は人だけではない
自動車へのイタズラ対策も

 自動車のワイパーのゴムを持っていってしまう、窓ガラスのパッキンを突く、爪で自動車のボディを傷つけてしまうなど、自動車への被害はどう防げばよいか?

 ワイパーのゴムについてはワイパーを上げておくだけで、大抵の場合は被害を防げる。ゴムを引っこ抜くのが難しくなるようだ。

 それ以外については、カカシ効果(編集部注/目新しい物にカラスが警戒し、一時的に近づかなくなる現象を指す、筆者の造語)を利用した対策だ。畜産施設などカラスを誘引する施設が近隣にあり、頻繁にカラスが飛来する場合などは難しいが、これといってカラスが集まる要因がない場合であれば、一時的に対策を行なうことで被害がなくなるケースがある。実際、クリスマスのリースをドアミラーに下げる、モールをワイパーで挟むなどで、カラスのイタズラがなくなったという例もある(図3-31)。

図3-31:自動車へのイタズラ防止のための飾り同書より転載

 また、ドアミラーや窓ガラスに映る自分を別のカラスと勘違いし、攻撃するケースがある。カラスは鏡に映った自分を自分であると認識できない。ほかのカラスと思うわけだ。そのため、縄張り内に侵入し、威嚇してもまったく逃げない、やけに好戦的なカラスと思うのか、ひたすら攻撃を繰り返す場面を目撃したことがある。これを防ぐには、ドアミラーをたたむ、窓ガラスの反射を抑えるために、窓ガラスの内側に日除シートを置くなどで対処できるだろう。