まずは、ヒナに危険が迫ると、動画のような警戒の鳴き声を発する。警戒の鳴き声は、短い「アッ」が短い間隔で複数回繰り返される。さまざまな場所でよく聞く鳴き声なので、ほかの鳴き声との聴き比べが難しいかもしれない。

 そのような状況からヒトがヒナに近づいた場合、今度はヒトに対し、威嚇の鳴き声を発する。こちらは濁った「ガー」という長めの鳴き声だ。近くの電線などに止まるカラスが、何回も繰り返し威嚇の鳴き声を発するようであれば、それは自分への威嚇と思って間違いない。親ガラスの最後通告だ。これを無視しヒナに近づくと(多くの場合、ヒナの存在を知らずに近づいているのだろうが)、親ガラスはついに威嚇行動を開始する。

 ヒナがいる場所があらかじめわかれば、その道を避ければよい。しかし、ヒナに気づかないケースがある。ひとつは、ヒナとはいっても身体がおとなに近い大きさになるため、区別がつかないケースだ。5~6月くらいになると、巣の外へ出るが、しばらく親元で生活する。このころのヒナを「巣立ちビナ」という。

 巣立ちビナは、親元にて餌をもらいながら、飛ぶ練習をするのだ。ヒナは警戒心が薄く、人通りがあるところで平気で休んでいることもある。身体の大きさもだいぶ大きくなるため、見慣れていないとヒナだと気づかないかもしれない。だが、おとなのカラスであれば、ちょっと注目するだけでも逃げるので、近づいても逃げないということはまずない。この時期に逃げないカラスがいたら、それは巣立ちビナと思ってまず間違いないだろう。

間の抜けた鳴き声「ンガー」が
聞こえたら近くにヒナがいる!

 ヒナに気づかないもうひとつのケースは、草の陰などに隠れている、または頭上の電線に止まっているなどで、ヒトがヒナを認識できていないケースだ。ヒトが威嚇されるのは、このケースがもっとも多いだろう。その場合は、さきほどの親ガラスの威嚇の鳴き声などをヒントにするほかない。

 ヒナの餌ねだりの鳴き声(QRコード11)に気づければ、事前にヒナの存在に気づくかもしれない。「ンガー」と間の抜けたような鳴き声をひたすら繰り返すので、目立つはずだ。ヒナの存在に気づいた際は、回り道をして威嚇を避ければよい。

QRコード11同書より転載
(11)ヒナの餌ねだりの鳴き声
https://youtu.be/MkIIuKXc_mw?si=kcZTiPdmdSW-Odp_

 さて、学校や会社の正門が威嚇のスポットになっているなど、どうしても回り道ができないような場合はどうしたらよいか?襲われる可能性がある場所を通らなければいけない場合、帽子や傘で後頭部を守ろう。