2012年10月、旧新日本製鐵と旧住友金属工業が経営統合して新日鐵住金が誕生し、東アジアでの“失地回復”に向けて動き出した。そんな中で、06年7月に分社して以来、グループに貢献してきた新日鉄住金エンジニアリングの存在が注目を集めている。長らく旧新日鐵の社内で“傍流扱い”だったが、巨大組織の親会社にはできないやり方で実力値を上げている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 四方を海に囲まれた人工島に建つ海上空港の一つ、北九州空港。2006年に開港した新しい空の玄関口には、02年に設立された新興航空会社のスターフライヤーが本拠を置く。

2009年9月に竣工した日本貨物航空(NCA)のライン整備ハンガーは、4件目の設計・施工事例となった。柱の数が少ない大空間の特殊構造物は、得意分野の一つ

 3月18日、北九州空港内にある同社の航空機整備用格納庫の建設が始まった。機体が丸ごと収まる特殊構造物の設計・施工を一括で請け負ったのは、新日鉄住金エンジニアリング(以下、新日鉄住金エンジ)。格納庫は、「エアバスA320」の日常整備に使われる。

 新日鉄住金エンジは、旧新日本製鐵のエンジニアリング事業部門がルーツで、06年に100%子会社として分離した。製鉄所などに関係するプラントや、特殊構造物の建設などを手がけてきた。

 同社の浅井武常務執行役員兼建築・鋼構造事業部長は、前のめりに語る。「過去には、大手ゼネコンの下請けとして、鉄骨や部材だけを提供することが多かった。だが、10年ほど前から設計・施工から手がける元請けの受注に力を入れている。今回、5件目の事例として、“鉄”という素材を知り抜いた私たちの提案が採用された」。

 逆説的だが、受注では「設計の段階でいかに鉄の使用量を少なくできるか」という点がポイントになった。鉄は、コンクリートより価格は高いが、比重が軽い。反対に、コンクリートは、鉄より安いが、重く、乾くまでに2~3カ月余計にかかる。