大企業同士の合併では、独占禁止法に抵触する怖れにより、動き出す前に諦めてしまうケースがあった。しかしながら、10月1日に誕生した新日鐵住金の事例によって、将来的な生き残りを模索する企業の“選択肢”が増える可能性が出てきた。官民の期待を背負って大海に船出した新日鐵住金と、今後のシナリオを占う。
かねて「石橋を3回叩いても渡らない会社」と言われて、とかく慎重な姿勢で知られた新日本製鐵だが、今回ばかりは違った。
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10月1日、国内首位の新日鐵と同3位の住友金属工業が合併し、新日鐵住金が発足した。この日を境に、互いに100年を超える歴史を持つ老舗メーカーは、着手できなかった営業上の戦略を含めた“融和”に向けて舵を切った。
長らく低迷が続く鉄鋼業界では、2002年9月に旧NKK(日本鋼管)と旧川崎製鉄が経営統合してJFEホールディングスが誕生した時以来の大型合併である。
新日鐵住金の宗岡正二会長兼CEOは、合併によって「総合力で世界ナンバーワンの鉄鋼メーカーになる」ことを強調する。一方で、友野宏社長兼COOは、「新日鐵住金として、“Best for the New Company”を判断の基準にして、課題の解決に取り組んでいく」と力を込めて呼応する。
JFEホールディングスの発足から約10年を隔てて、再び起きた大型合併。奇しくも11年2月に新日鐵と住友金属が最初に経営統合の意思を表明した場所は、01年4月に旧NKKと旧川崎製鉄が統合計画を対外発表した時と同じホテル・ニューオータニで、会場まで同じエド・ルームだった。
確かに、03年4月のJFEスチール発足は、産業界にも株式市場にも大きなインパクトを与えた。新たに誕生したJFE陣営に対し、新日鐵、住友金属、神戸製鋼所の3社による“ゆるやかな提携”を模索する企業連合が生まれ、国内に五つあった大手高炉メーカーが二つのグループに収斂したことは、転換点となった。