――女性のほうがにおいが少ないというイメージがありますが、夫婦で同じものを食べていても、男性のほうがにおいがきついということがありますか?

石黒 それは、性差というより個体差だと思います。個人によっても、時と場合によっても腸内環境は違いますから。夫婦で同じ食事といっても、厳密にいえば、すべてが同じ食物、同じ量ということはないでしょうから。

――ご著書の中で「先生、便がくさいんです」と深刻そうな表情で訴える患者さんがいるという話をされていましたが、そういう患者さんは多いのでしょうか?

石黒 いいえ、決して多いわけではありません。しかし、ご家族に指摘される、ご自分でもくさいと思うということになると、ナーバスになるのも無理はないと思います。便の悩みというのは、非常にデリケートなものですから、人知れず悩みがちです。

 しかし、こういう時のために医者はいるのですから、恥ずかしがらずに消化器内科医を頼っていただきたいですね。稀なケースではありますが、便のにおいが発端で、重篤になる前に病を発見できたということもありますから。

――便がくさいということも重篤な病のサインになりうるのですか?

石黒 便はくさいものですし、くさいって尺度も人それぞれ。ちょっとのにおいでもくさいという人はいます。しかし、我々、医者が知りたいのは、どの症状でもそうなんですが、「今までと違うか?」ということです。においであれば、くささの強烈度よりも、においが今までと違うのかを知りたいわけです。

 もし、便に潜血があるならば、鉄くさいような独特なにおいがしてくることもあります。においだったら、いつから気になるようになったのか、以前と比べて、どういうにおいになったのか、色はどうか、形(下痢かうさぎのフンのようか等)、回数、腹痛の有無などを問診で確かめていくわけです。