総額賞金1億ドルの
「若返りコンペ」とは?

 車は定期的にメンテナンスしたり、ときどき部品交換したりすると、いつまでも新車と同じように乗ることができます。それはどこをきれいにして、どの部品を交換すればいいのかわかるからです。

 ライフサイエンスの進化で、ようやく人間の体の謎も少しずつ解明されてきました。

 世界中でオートファジーやサーチュイン遺伝子へのアプローチ以外にも、さまざまな長寿研究が行われている中、23年11月に発表された、いわゆる“若返りコンペ”「XPRIZE Healthspan」が注目を集めています。

「XPRIZE Healthspan」とはサウジアラビアに本部を置く世界的な非営利団体Hevolution Foundationが、月面探査コンテストなどで知られるXプライズ財団(X Prize Foundation)を通して企画したコンテストで、その賞金総額は1億ドルを超えます。

 優勝の条件は「2030年までに65歳から80歳の人の3つの領域(筋肉、認知、免疫機能)を少なくとも10年分以上、回復させるような介入方法の開発に成功すること」です。

 25年には世界中から40のチームが決定する予定で、現時点で200を超えるチームがエントリーしています。

 人生100年時代を迎えた今、この分野が今後さらに注目されていくことでライフサイエンス研究が進むと、体や心の健康のみならず人とのつながりも人生最後の時まで保つことができる、真の意味でのウェルビーイングな一生が実現できるかもしれません。その日はそんなに先ではないのでないかと私は考えています。