また、寒い季節でコートなど着ているときはこれもできれば脱いだ方がいい。古本屋の通路は概して狭いから、着膨れしたまま本棚の前をウロウロされるのも困る。客側から言えば「私は万引きなどいたしません、ご安心を」という意思表示にもなる。同じ理由から、ナップザック、大きなショルダーバッグなども肩からはずしておこう。通路で他の客とすれちがうとき邪魔になるし、ついバッグの角で本を傷めないともかぎらない。大きな荷物は店内へ入ってすぐ帳場へ預けておけばいい。身軽になった方が本も落ち着いて見られる。

 まだ、店には入ってはいけません。やることがある。

 咳やクシャミはなるべく店の外でしておこう。風邪をひいたまま、マスクもせずに店に入り、「ガックション、ビャックション!」と連発された日には店主は気が気じゃない。唾や鼻水が本に飛ばないかと、心臓が早鐘を打つ。

 あまり重い風邪のときは、古本屋などへ行くべきではないし、クシャミや鼻水が出そうなときはマスクをしていくべきだろう。

ベチャクチャ話したがる
カップルの入店は厳禁

 まだだよ、まだ入ってはだめ。

 店にはなるべく単独で行こう。仲間連れやカップルで入って、本を手に取ってはベチャクチャくっちゃべっているのがいるが、店にも迷惑なら、他の客にも迷惑だ。

 なかにいるのです。「こないださあ、和田が電話かけてきてさ、あいつ何言ったと思う。とんでもねえの。バカじゃないかと思ってさ」などと、本とは関係ない、どうでもいい話を友人同士でしてる輩が。

(バカはおまえだよ)と私などいつも胸でつぶやいている。どうも、本好きの友人につきあって入ったはいいけど、本にはまったく興味がなくて、世間話をして場をつないでいるようなのだ。「おまえ、うるせえよ。外で待ってな」と、友人も注意してあげましょう。

 カップルもだめだ。

 こんなジンクスがあるのだ。古本屋が店を開けて、最初に入ってきた客がカップルだと、その日は1日ダメ。まったく本が売れない。出久根達郎さんがエッセイの中でそう書いている。