配達現場で見た「令和の人間模様」

 配達していると、「令和の人間模様」を実感する場面に出くわす。一生縁がなさそうな家賃300万円超えの高級タワーマンションにも配達した。ここは多数の芸能人や歌舞伎役者が住むといわれるマンションで、その時の配達料金は455円だった。

 ハンディキャップがある人の家に配達したときには、インターホン越しに「居間まで運んでほしい」と頼まれて、家に上がったこともある。また、部屋の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてくるマンションでは、中に人がいるのが分かっていても玄関の横に「置き配」(ドアの脇などに荷物を置いていく配達)をすることがあった。Uber Eatsの配達員は、普段なかなか買い物に行かれない人たちの需要を満たすという面もあるのだ。

 中には、コンビニから200mしか離れていない、4棟先のマンションへの「ショートドロップ」(お店から届け先まで距離が短い配達)もあった。地元でも有名な新築ワンルームマンションで、住民は全員キャバ嬢といわれている。その時の配達内容はポカリスエットとヨーグルトだった。前日のアルコールが響いていたのかもしれない。

 一番印象に残っているのは、60階建てのタワーマンションに配達したことだ。あとで報道番組を見て驚いた。筆者が配達をした数日後の早朝、いわゆる「新宿タワマン25歳女性刺殺事件」がそのマンションで起きたのだ。事件が起きたのは早朝3時頃だったが、逮捕された容疑者も、事件現場で容疑者を取り押さえた3人も、全員Uber Eats配達員だったらしい。

過去実績過去実績を見ても、新宿・渋谷は真夜中でもピークなことが分かる。早朝、事件現場のマンションに配達員がいても不思議はないのだ