熱中症というのは、大量の汗をかくなどして体内の水分が失われ、それ以上は汗をかけなくなって体温を下げることができなくなり、さまざまな臓器に障害が起こる病態です。

 個人差はありますが、一般的には体温が37.0度以上あるときは危険性が高まるとされ、体温が39度以上あるときは脱水が深刻で危険な状態といえます。脳の温度はそれ以上になることもあり、思考停止状態になるケースさえあります。いうなれば、意識もうろう状態です。つまり、体温の上昇が熱中症の「サイン」になるのです。

 熱中症から命を守るためには、1日に最低2回、できれば3回は体温を測る習慣をつけることをおすすめします。持病がなく健康な人が気温の高い環境で行動する場合、1日に何度も体温を測ってみると、状況によってかなりの変化があります。私は耳の中のもっとも高い鼓膜の温度を測定できる耳式体温計を使っていて、今は右耳が36.0度、左耳も36.0度です。衣服を脱ぎ着することなく測定できるのでとても便利です。

 私の場合、何かしら考えて整理しながら会話している状況では右側が高くなります。英語の論文を書いていると逆に左側のほうが高くなり、体を動かしているときはもっと極端に左右の耳で体温差が表れます。それくらい、体温は自分の体の状態を反映してくれるのです。

異常な体温を感じたら首元を冷やし
失われた水分と塩分を補充する

 熱中症を予防するためには、脳や内臓といった体の内部の温度(深部体温)を測れるわきの下、口(舌)、耳、直腸などの場所で測定し、普段の体温よりも高くなっているときは、まずは首元など太い血管が通っているところを冷やしましょう。

 そのうえで、よくいわれていることですが、水分を補給します。大切なのは「排出された分を補充する」と意識することです。一般的な体重の人は1日に1リットル程度の水分を尿として排出しています。

 ですから、まずは最低でも1日1リットルの水分を食事以外から摂取する必要があります。いっぺんに1リットルの水分を補充するというわけではなく、起床時にコップ1杯の水を飲み、3度の食事の際も必ずコップ1杯の水を取るといったように、「生活のなかの行動に合わせて、必ず水を飲む」という習慣を身につけましょう。