これだけでも極端な脱水になるリスクは減りますが、それでも暑さで体温が上昇している場合は、汗の量に応じて30分に1回程度を目安に水分補給するといいでしょう。

 また、大量に汗をかくと水分だけでなく塩分も失われますから、その場合はたとえば、「OS–1(オーエスワン)」など、市販の経口補水液が理想的です。いっぽうでアルコールやウーロン茶は利尿作用が強いので、脱水につながり逆効果になります。

心臓が悪い人は健康な人よりも
手を打てるまでの時間が短い

 こうした自分の体の状態を正常なほうへ戻す対策は、「体温が上がってきているな」とわかった段階で行うのが重要です。熱中症になってしまうと、理解しているはずの行動ができなくなってしまうからです。

 私も以前、身をもって経験しました。夏の暑い日差しの下、ゴルフのラウンド中に熱中症になりかけたのです。自分ではよく覚えていないのですが、バンカーに打ち込んでしまったボールを出そうとスイングした際、何度も空振りをし、妙な打ち方を繰り返していました。

 するとキャディーさんが近寄って「具合が悪くありませんか?」と尋ねられました。

 そのひと言で「あれ?何やってるんだろう」と我に返り、ひとまずバンカーからの脱出に成功しました。ただ、そのホールが終わると、近くにある休憩所で15分ほど休みながら体を冷やすように言われ、水分も補給。これで、その後はいつものようにプレーすることができるようになりました。たしかに、熱中症になりかけていたのです。

 熱中症になる人は自分が熱中症だとは思っていません。これでは、体を冷やしたり水分補給したりできませんから、体温を測って上昇していたら、その段階で手を打つべきなのです。

 心臓トラブルをはじめ基礎疾患を抱えている人は、健康な人に比べると“手を打てるまでの時間”が短いといえるので、なおさら注意しなければなりません。だからこそ、熱中症のサインになる体温の測定はより重要になります。ただし、心筋梗塞や心臓弁膜症などで心機能が低下している人は、水分をとりすぎると心不全につながります。こまかい調整が必要なので、万が一に備えて医師に確認しておきましょう。