「手間」としては、役所や銀行との相談や届け出、税理士や司法書士などとの相談や打ち合わせがあります。こうした相談や打ち合わせは平日に行われることが多いので、勤め人の方はわざわざ有給休暇を取って対応しなくてはなりません。そのほかに、家族との話し合いの時間も持つ必要があります。

 掃除や雑草の駆除などの家や庭の管理は、誰かに頼んだり空き家管理サービスに任せれば手間は省けますが、当然費用がかかります。

こうして親の家は「負動産」化していく

 それでも、空き家は管理が行き届かなくなり、やがて周辺から苦情が持ち込まれるようになります。そうなると最終的には解体せざるを得ませんが、それには解体のための費用がかかります。古い家で壁などにアスベストを使っているものになると、そのコストは大きな負担となります。

 解体前には、粗大ゴミや大型家電を捨てる際に費用がかかり、予約の必要もあります。一般的なゴミでも、分別をして決められた曜日の朝に出さなくてはなりません。軽トラックを借りてゴミの集積場まで運ぶという手もありますが、地域によっては集積場に運ぶことが認められていないところもあります。

 片づけが進んで布団もなくなると、ホテルに泊まるための宿泊費もかかります。冷蔵庫も電子レンジもなくなると、外食しなくてはなりませんが、地域によってはそうした店が近くにあるとは限りません。

 以上のように考えていくと、「住まない実家」はもはや資産というよりも不良資産であり、「負動産」という呼び方がまさに適当といってよいでしょう。

「住まない実家」でも、すぐには手放せない人がほとんど

 空き家になった実家は、残念ながら「金食い虫」でしかありません。しかし、だからといって誰も住まなくなった実家をすぐに売ることができるでしょうか。

 おそらく、ほとんどの人は「できない」と答えるでしょう。それが当然の心情だと思います。実家というのは、自分が生まれた家であり、親と一緒に長年過ごした思い出が染みついた家だからです。それを、誰も住む人がいなくなったからといって、すぐに売るという割り切りはできないのが普通の人の考え方です。