雑誌の相続特集や不動産コンサルタントが著した単行本などでは、「住まない実家はすぐに売ったほうがいい」とよく書かれています。確かに、税制上は早めに売ったほうがいい場合が多いのです。前項で挙げたように、そのまま持ち続けていると固定資産税や維持費がかかりますが、売ってしまえばお金は入りますし面倒もありません。

 しかし、実際には少なくとも1年はそのままにしているケースが大多数です。もちろん、遺産分割によってきょうだいにお金を払うために土地を売らなくてはならないなど、緊急にお金が必要なために、すぐに売る人もいますが、そうした事例は多くありません。

 相続のスケジュールを考えても、なかなか売る決心がつかないことは、よくわかります。何よりも相続税の申告期限が、亡くなってから10カ月以内です。そこまでは長いように見えて、あっという間です。多くの場合、10カ月ギリギリまでかかりますから、それまでに売る例はあまりありません。

 そして、当然ながら、名義変更は相続人の間の遺産分割協議が終わってからでなくてはなりません。となると、少なくとも土地や建物の名義が変わるのは、早くて1年近く後になるわけです。結果的に、少なくとも一周忌までは売る余裕もないというのが実情なのです。

「実家じまい」は時間を置くことに意味がある

 一般的に、気持ちの整理がついて、「売る」というステップまでいくには、空き家になってから2、3年はかかります。

 いくら管理しているつもりでも、住まない家は徐々に荒れていきます。

 2年も経ってくると、近所から苦情が寄せられるようになります。庭木が伸びて隣家や道路にはみ出している、台風で屋根瓦が落ちそう、虫が大量に発生した、変な人が塀の中に入っていたなど。たまには実家に通って手入れをしているつもりでも、こうした話が出てきて、維持するのが億劫になってきます。