母国にはない日本の「接待文化」にカルチャーショックを受けたのは、駐日ジョージア大使である著者。政治家や企業経営者が会食を夜6時、8時、10時と1日に2回も3回もセッティングしたり、さまざまな贈答品を送ったりする習慣は、なぜ日本でこれほどまでに発達したのか?著者が考えた答えとは。本稿は、ティムラズ・レジャバ『日本再発見』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
政治家や企業経営者が設ける
「会食」に衝撃を受けた
日本にはしっかりとした接待文化があります。それがゆえに、会社の重鎮と政治家が秘密裏に会食を行ったりすると、マスコミに取り上げられて法的・社会的な問題に発展することさえあります。ジョージアではそのようなことはまず考えられません。直接的に献金するとまずい場合においしい食事でもてなし、タクシー券を配るといった迂回も必要としません。ある意味で、それだけ日本では接待の文化が発達しているのだと言えるのではないでしょうか。
私は外交の世界に飛び込んで以降、大組織のなかで地位が高い方やさまざまな領域でハイレベルな業績を挙げている方々とも日頃からやりとりしていますが、だんだん「えらい人やすごい人も、みんな同じ人間なんだな」と思うようになりました。それでも驚くことはあり、そのひとつが会食です。
日本では政治家や企業経営者は会食が夜6時、8時、10時と1日に2回も3回もセッティングされていて、それを日々繰り返していると知ったときには衝撃を受けました。
もちろんたくさんごはんを食べたいからではなく、地位の高い方にとってはインフォーマルなネットワーキングの機会が重要だからであり、会食をセッティングする側にとっては、たとえおもてなしをする対象が短時間しかその場に滞在しないとしても「手厚く接待した」という事実がのちのち意味を持つと考えられているからでしょう。しかし、それにしてもやりすぎではないかとカルチャーショックを受けました。
なぜ日本でこれほど贈り物や
手紙の文化が発達したのか?
接待に加えて、日本では贈答品文化も発達しています。どの時期、どのイベントには、どんな風に相手にプレゼントを贈るべきなのか、いただいたお返しはどうするのがよいのか、しっかりマナーとして決まっています。もちろんジョージアにもさまざまな記念の贈り物をする慣習はありますが、日本人ほど年に何度も手紙を書き、プレゼントを贈る社会ではありません。
日本では年始に年賀状やお年玉をやりとりし、バレンタイン、ホワイトデー、母の日、父の日、お中元、暑中見舞い、寒中見舞い、お歳暮、クリスマス、誕生日、○○記念日、就任・退任祝い等々、無数に機会が用意されています。
なぜ日本ではこれほど贈り物や手紙の文化が発達したのでしょうか?