よく中高年のツアー団体を見かけると思いますが、「元気なうちに、今、旅行に行きたい」と考えている人も多く、時間ができた定年後の60代後半はそのピークとなります。支出は1カ月あたり3492円で、70代前半は2936円、70代後半は2715円と下がります。それでも50代後半2016円から60代前半の2002円より多くなっています。人気なのは温泉、高原、湖などの自然豊かな景色が広がるところです。

 そして、定年後であっても、元気な人は引き続きバリバリ働く時代です。新たな仕事のための人脈作りも必要でしょう。それに同窓会の幹事なども回ってくることが多くなります。したがって、高齢者の交際費は若い頃と比べて増加します。交際費は50代前半は1万4297円、後半は1万7559円ですが、60代前半になると1万9837円に増え、さらに定年後の60代後半になると、2万0970円にまで増えています。

 健康に気を付ける人が多くなるためか、食費の支出にも特徴が見られます。たとえば、自宅で食べる食料品の買い物では魚類が急増しています。50代前半は5284円、後半は5607円ですが、60代前半になると6251円、後半はさらに1000円も増えて7233円と増加しています。筆者の周りの60代は、飲食店も魚類が多い和食を選ぶようになっており、実際、エンゲル係数も増加しています(エンゲル係数は50代前半は24.8%、後半は25.4%ですが、60代前半は27.2%、後半は28.5%です)。

身の丈に合った生活をするなら
「老後1000万円」でも十分なワケ

 逆に言えば、これらの支出を増やさずに倹約すれば、さらに生活は楽になるでしょう。たとえば定年後、衣類や靴は若いときほど買わなくなります。50代前半は1万2967円、後半は1万1862円から3分の1ほど減り、60代前半は9352円、後半は7889円と減少しています。
 
 そう考えた場合、「身の丈に合った生活をする60代」なら、老後1000万円も備えがあれば、十分暮らしていけるはずなのです。世間で言われている「老後2000万円問題」には、実は大した根拠はないのかもしれません。