記録的な猛暑が続き、「キッチンで火を使いたくない」「買い物に行くのもしんどい」という声を追い風としているのが冷凍食品だ。アメリカで70年前に普及した「ワンプレート冷凍食品」が令和の日本でようやく食卓に広まりそうだ。なぜここまで日本での普及が遅れたのか。「冷凍のり弁」を発売したオリジン東秀に話を聞いた。(取材・文/ジャーナリスト 村田くみ)
6年間で市場規模は約8倍に
なぜそんなに売れるのか
冷凍食品は手軽に一品追加できる「おかず」だけでなく、野菜や主食のチャーハンやパスタ、スイーツなどバリエーションが充実している。
一般社団法人日本冷凍食品協会が4月公表した「全国の25歳以上の男女1250人に聞く“冷凍食品の利用状況”実態調査」によると、冷凍食品、缶詰・レトルト、デリバリー、ファストフード、惣菜・弁当といったあらゆる食事のカテゴリーで、「タイパ(時間帯効果)」やコスパ(費用対効果)」について評価したところ、いずれも1位は冷凍食品。現代社会と冷凍食品の親和性の高さがうかがえる結果となった。
23年の猛暑で「家で食べることが増えた」や「料理時間が短くなった」という人が増加したように、厳しい暑さは食生活に変化を及ぼしていることがわかった。
特に暑すぎて料理するのがしんどいときや、コロナなど病気にかかって寝込んだとき、電子レンジで解凍するだけで食べられる、主食とおかずをセットにしたワンプレート型の冷凍食品に注目が集まっている。「ワンプレート」タイプの冷凍食品の市場規模は急拡大しており、調査会社のインテージによると、2023年の実績は17年比で7.7倍に達した。
「ワンプレート型の冷凍食品は、ストックとしての需要が大きい」と語るのは、消費文化を研究するニッセイ基礎研究所の生活研究部の廣瀬涼研究員だ。
「マルハニチロが行った『冷凍食品に関する調査 2021』でも、『将来的に、どのような冷凍食品があったらいいなと思うか』という問いに対して『お弁当がそのまま冷凍食品になっているもの』という回答が最も多く寄せられました。仕事が忙しくて家に帰って食事の支度が難しいときや、帰宅途中にコンビニに立ち寄るのもできないくらい疲れた日に、たった3分レンチンするだけで食べられる。とても便利だと思いました」(廣瀬研究員)