最低賃金制によって解雇された
メキシコ人の命綱は福祉と犯罪

 そこで、なぜアメリカの経営者たちが移民労働者を排斥し始めたかというと、最低賃金を守らなければいけない場合、メキシコから来る労働者でそれ以上の労働価値を提供できる人材がなかなかいないからです。肉体労働はできるけど、英語をまともにしゃべれないような人を、雇いたくないということになったのです。

 そこでアメリカの中でメキシコ人の解雇が進むと、メキシコ人たちにも暮らしがあるので、選択肢は違法に安い労働をするか、犯罪に手を染めるか、公共の福祉に頼るかのどれかになります。その中で、生活保護的な公共の福祉に頼ると、今度はアメリカ人のほうから、自分たちが払った税金でなぜメキシコ人を養わなければいけないのかと反発が出てくるのです。

 そこで仕方なくメキシコ人の中には犯罪に手を染める人が出てくるわけですが、そのために治安が悪くなると、メキシコ人を排斥して国に帰せという運動が起こってきます。

書影『税弱な日本人からふんだくるピンハネ国家の不都合な真実』『税弱な日本人からふんだくるピンハネ国家の不都合な真実』(宝島社)
ひろゆき 著、根本和彦 監修

 いずれにしても、外国人移民を入れることは、自国にとってメリットがないと、アメリカやヨーロッパで言われ始めてきているのです。

 先進国には、人間には人権があり、労働者は最低賃金を定めた労働基準法によって守られなければいけないというルールがあります。そのため人を働かせる以上は1000円なら1000円の最低時給を支払わなければなりません。これを否定する人はいないでしょう。

 そのルールに基づいて今までは1000円以上の生産性を上げられない人でも雇用していたわけです。しかし、中にはこの先進国ルールに守られているのをいいことに、800円ぐらいの生産性しか上げられない労働者が、1000円の時給でも満足せず賃上げを要求してきたりします。店側からすれば「マジでやってられない」ということになり、今ようやくその現実に気がつき始め、生産性を上げられない労働者を排斥し始めているのです。