労働基準法は低スキル労働者から
仕事を奪う方向に作用する

 これは先進国の中でも遅れているほうで、フランスのファストフードは、ほぼタッチパネルになっています。食べ物のオーダーもタッチパネルで行い、クレジットカードで決済すると、番号の書かれたレシートが出てきます。そして食事の用意ができると、番号がディスプレイに表示されますので、自分の持っているレシートに書かれた番号が出てきたら、食事を取りに行くという流れです。

 フランスでもスペインでもスイスでもドイツでも、基本的にはこのタッチパネルのシステムを飲食店で導入しています。というより、タッチパネルでない店舗をヨーロッパで探すことのほうが今は難しいくらいになっています。

 なぜこのように機械化・自動化が進んでいるかというと、人を雇うよりも機械のほうが安いからです。人を雇ったら給料を払わなければいけませんし、1回雇ったらクビにできません。そのため人を雇う場合、一定以上稼げる人に限るという風潮が、今の時代に生まれてしまっているのです。

 昔は労働基準法がなかったので、たとえば1時間に500円稼ぐ働き手に対して、店側は300円を与え、200円を利益として得ていました。そのようにして小学生レベルの労働しかできない人でも、その人に合った給料を払うことで働かせることが可能だったのです。

 ところが今は東京では最低賃金が1113円です。ということは、たとえば1200円以上くらいの価値を提供できる働き手でなければ、店側が損をしてしまうのです。もし800円の価値しか生み出せない人に対しても、最低賃金の時給1113円は払わなければなりません。つまりその人を雇い続ける限り、店側は200円分の損をし続けることになります。つまり労働基準法がある限り、最低賃金以下の人を雇うと損をするというのが今の先進国の仕組みなのです。