16年に、敦さんは農家を継ぐと決め、妻の和子さんと戻り、翌年の春、農機具倉庫を改装してコンセプトショップtenを開店した。栽培方法を考えるに当たり、蔵元が言った「酒を熟成させたときこそ、米の力が表れる」という言葉が心に刺さり、探究の結果、たどり着いたのが山だった。山が健全であれば、圃場や酒の仕込み水も良くなり、地域にも良い。この考えに共感してくれたのが同地域で酒米を作る藤本圭一朗さん。思いを共にし、17年に市内の酒蔵、富久錦でSEN 生酛の委託醸造を開始。里山整備と圃場の個性化が同時に図れる方法を模索し、放置林の竹を堆肥に活用し、杉の間伐も行い、杉玉製作など消費者へ体験の機会を設ける。米の作り手と酒蔵、飲み手を結ぶ線“SEN”が広がり、未来へつながる山田錦の産地を育む。

新日本酒紀行「SEN」SEN 純米大吟醸 無濾過生原酒
●ten・兵庫県加西市山下町2349-29●代表銘柄:SEN 純米大吟醸、SEN 生酛●杜氏:純米大吟醸・廣瀬商店 久保田通生、生酛・富久錦 村崎哲也●主要な米の品種:山田錦
新日本酒紀行「SEN」名古屋敦さん Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「SEN」名古屋敦さん Photo by Y.Y.