新日本酒紀行「小夜衣」酒蔵外観 Photo by Yohko Yamamoto

菊川唯一の地酒蔵!父と息子で醸す個性派の辛口純米酒

 日本酒造りは工程が多く、それぞれの専門担当者がいて呼び名がある。米を蒸す担当の釜屋、麹を作る麹屋、酒母を立てる酛(もと)屋。醪(もろみ)を搾って酒と酒粕を分ける船頭、雑務をこなす追い回しなど、役割分担するのが一般的だ。しかし、10年以上もたった1人で酒造りをしたのが、静岡県菊川市の森本酒造5代目兼杜氏の森本均さん。孤高の酒造りで無理がたたり、重要な時期に疲労骨折や胃潰瘍などを繰り返すようになった。長男の圭祐さんは建設機械の整備士で、父が入院するたびに、蔵へ戻って後始末。孤軍奮闘する父の苦境を見ていられず、2015年に酒造りの道に転身した。「まあ、助かってるよ」と言って均さんは照れくさそうに笑う。