「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、この夏『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。今回は出版を記念して著者の萩原氏によるオリジナル記事をお届け増します。

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高齢の親が災害対策をしてくれない

高齢の親が災害対策をしてくれないときの伝え方
【NG】「災害に備えて準備しなきゃダメじゃん!!」
【GOOD】「ウチは川が近いから水害対策を終わらせたんだ。お父さんのところはまず家具の転倒防止策からだね」

 南海トラフをはじめとする災害に備えて対策を進めることの重要性ついては、もはや議論の必要は無いと思います。もし、皆さんが親を思って話そうとしているなら100%皆さんが正しいです。

 日本は世界トップクラスの地震大国であり、ゲリラ豪雨による水害、予測されている津波や噴火、電気ガス水道、流通といったインフラのストップなど、災害の影響は日常生活だけでなく、命と直結しています。

 ただ、こういったことを親と話す際には注意が必要です。

 なぜなら、人は自分の意見が正しいと信じているときこそ間違えます。自分が間違っているかもしれないという視点に立てないからです。

 NGの伝え方は、議論の余地のない災害対策不備の指摘をしています。結論は「準備する」ですから、子どもから正論で指摘された準備のできていない親の立場はありません。

 そうすると論点の正誤よりも、反論できない指摘を受けたという「負の感情」が前面に出てきてしまいます。そして自己防衛的な心理が働いて「大丈夫だ」「必要ない」「後日やる」といった回答となり、よかれと思ったアドバイスが単に親子の関係悪化になる指摘に終わってしまいがちです。