生物の本能が恋愛の天敵に!?
ネガティブ・バイアスとは

 生物人類学者であり、恋愛に関する複数の著書が人気のヘレン・フィッシャーは、私のインタビューの中で、人間の脳にはネガティブ・バイアス(Negativity Bias)があり、うまくいかなかったことを本能的に反芻しようとすると説明しました。

 上司や同僚から仕事のフィードバックをもらったことのある人は、褒め言葉と批判のどちらをはっきりと覚えていますか?そこにはネガティブ・バイアスが作用しています。

 フィッシャーによると、私たちの脳は、同じ経験を繰り返さないために、いやな経験を鮮明に記憶するよう進化してきたそうです。そのような脳構造のおかげで、人は脅威を察知して避けることができます。サーベルタイガーに食べられそうになったなら、その動物がどんな姿をしていて、どこに住んでいるかを覚えておくと役に立ちます。

 現代では肉食の捕食動物に襲われる危機は減っていますが、人の脳は現代版の別の脅威にそなえています。「元カノが5人いて、そのうちの1人から嫌われているとすれば、それがどの女性なのか覚えておくと役に立つ」とフィッシャーは指摘しました。

 人類の祖先を助け、いまでもいくらかの価値をもつこの本能が、現代では、とくに恋愛において試練を生みだしています。つまり、デートのあとで相手の欠点をもっとも鮮明に思い出す可能性が高くなるのです。