「何も残せてない」と言うのは
ファンの人たちに失礼じゃないか
最終的な結論は、社長と俺でのマンツーマンの会食の場に持ち越された。
めったにないんだけど、数年に1回、社長とサシで飯を食う。ものすごくドキドキするし、できることなら行きたくない(笑)。ほめられるのか怒られるのか、内容は行ってみないとわからないのが、また恐ろしいんだ(笑)。
そのとき、社長に言われたのは「俺個人の思いとしては、もう一度ファンモンを観てみたいけどな」だった。
誰かに必要とされるということと、しかもそれが「3月11日」という日本人にとって決して忘れることのできない日に、一夜限りとはいえ「再結成を望む」という声があることの本当の意味を、もうちょっと考えたほうがいいんじゃないかーーって。
さらに、社長はこんな話もしてくれた。
「加藤は『何も大きなことを成し遂げられてない。まだ爪痕も残せてない』と言うけれど、ファンモンを解散して苦しい時期も乗り越えて、今もたくさんのファンの人がお前の全国ツアーに来てくれる。そういう人たちを目の前にして『何も残せてない』と言うのは、逆に失礼じゃないか?」
うれしかったのは、俺のソロでの活動もちゃんと評価してくれていたことだ。
「お前は頑張ってソロとして踏ん張り続けた。お前がずっと踏ん張ってきてくれたからこそ、ファンモン再結成の話もあるんだぞ」
この言葉が俺には刺さった。自分の中でソロの活動はずっと「足りない」と思っていたんだけど、決してゼロじゃなかった、無ではなかったんだ、と。