国勢調査局の生活コスト試算ツールによると、カリフォルニア州のアフリカ系アメリカ人の28%が貧困状態にあるが、全米では22%である。州内最大の民族であるヒスパニック系住民の実に3分の1が貧困ライン以下で暮らしているが、州外では21%である。書類なき移民(訳注「法的な書類上は『不法移民』だが、自らの意思で不法にアメリカへ入国したわけではなく、一定期間を越えてアメリカ国内に居住して就労し、かつ何の犯罪も犯していない外国人のこと」〈出典:Imidas〉)を含むラテン系非米国市民の3分の1以上が貧困ラインかそれ以下で暮らしている。

 カリフォルニア州民の約3人に1人が住む広大な内陸部は、全米で最も高い貧困率に苦しんでいる。州内最大の大都市圏ロサンゼルスは、アメリカの主要都市圏のなかで最も高い貧困率を示している。ロサンゼルスの一部では、ホームレスの野宿が増え、チフスなどの中世に流行した病気が発生している。中世を代表する疫病の腺ペスト(黒死病)も再流行の兆しがある。

シリコンバレーでは中流階級が消滅し
いまや中間管理職すら家を持てない

 テックブームの中心地であり、有史以来最も急速に富が蓄積された場所、カリフォルニア州のベイエリアは、新富裕層(mass affluence)を生み出すどころか、新たなディストピアを現出させている。

 ウェブサイト『ブルームバーグ都市研究所(CityLab)』は、シリコンバレーのあるベイエリアを「隔離されたイノベーション・エリア」と呼び、上流階級は繁栄し、中流階級は衰退し、下流階級は貧窮し、その状態が固定化しつつあるとしている。

 ブルッキングス研究所は、全米の大都市のなかで過去10年間に格差が最も広がったのはサンフランシスコであると報告している。カリフォルニア予算・政策センターは、州内で最も経済格差が大きい都市にサンフランシスコを挙げている。膨大な富が集まるこの都市は、ホームレスが町中に溢れ、軽犯罪が横行する一方で、中流世帯が消滅の一途をたどっている。サンフランシスコでは過去10年間で、持ち家に住む世帯が3万1千世帯も消失した。

 かつて郊外にあって平等主義の手本とされたシリコンバレーの南側も、いまや階層化がかなり進んでいる。1980年代まで、サンノゼ地区は国内有数の平等な経済圏を誇っていた。製造・組立・輸送・顧客サポートなどの仕事によって、さまざまなスキルを持つ人びとがカリフォルニア・ドリームを実現し、多くの工場労働者や中間管理職が持ち家を取得し、快適な老後を送ることができていた。1980年代は「シリコンバレーの成長と公平性が両立した素晴らしい時代だった」とマニュエル・パスター(編集部注/南カリフォルニア大学教授)とクリス・ベナー(編集部注/カリフォルニア大学教授)は書いている。