テック企業は雇用を生み出さない
ベイエリアでは16万人が失業

 しかし、シリコンバレーがテクノロジー分野で世界的に優位に立つようになると、階級間格差はますます広がった。2015年までに、サンタクララ郡とサンマテオ郡には約7万6000人の大富豪と億万長者が住んでいたが、何十万もの人びとが月々のローンを支払いながら家族を食べさせるのに四苦八苦していた。シリコンバレーの住民の30%近くが公的・私的な経済援助に頼っている。

 過去10年間の好景気のなかで、シリコンバレーの中流階級の労働者、ラティーノ、アフリカ系アメリカ人のコスト調整後の賃金は低下した。雇用が製造業からソフトウェア産業にシフトしたことが、その1つの理由である。

 過去20年間にベイエリアでは製造業の雇用が約16万人失われた。IT産業は大きく発展したものの、新規のソフトウェア企業は、従来のハイテク企業を含む他業種の企業に比べて必要な労働者数が少なくて済む。従業員1人当たりの売上高は、たとえばインテルと比べればその2~3倍である。

 しかも、そうした企業は一時滞在ビザを持つ非市民(市民権を持たない人)を大量に雇用する場合が多く、現在ではシリコンバレーの技術系労働者の40%以上がこうした非市民で占められている。一方、テック業界で働く黒人やラティーノの従業員の数は減少の一途をたどっている。