若年層を中心に雇用環境は悪化
16~24歳の失業率は17.1%に上昇

 しかし、不動産投資に依存した経済成長は限界に来ている。マンション建設など投資機会の減少により、需要は縮小気味だ。特に、深刻なのは若年層の失業である。

 23年6月、16~24歳の失業率は21.3%で過去最悪の水準に上昇した。その後、国家統計局は調査手法を修正するとして公表を一時停止し、24年1月から再開した。7月、16~24歳(学生を除く)の失業率は17.1%だった。6月の13.2%から3.9ポイントの上昇である。

 中国では例年6月に大学生が卒業する。今年は4月中旬時点で新卒大学生の内定獲得割合が50%を下回ったとの報道もあった。バブル崩壊の影響で新卒の就職が難しくなり、失業率は上昇したと考えられる。全体の失業率も5.2%で、6月から0.2ポイント上昇した。

 19年の中国人民銀行の調査によると、中国の家計が保有する資産の59.1%は不動産だった。マンションの価格下落に加え、上海総合指数など本土の株価も不安定な展開だ。逆資産効果は高まらざるを得ない。しかも中国では、不動産の完成前に売買契約を結び住宅ローンの返済が始まる「予約販売」方式が多い。購入したマンションが未完成で放置されてもローンの支払いはなくならない。

 債務を減らすために、消費や投資を減らす個人が増加し、個人消費は停滞気味だ。7月の個人消費は前年同月比2.7%増だったが、コロナ禍が発生する直前の水準(7%前後)と比較すると、消費の勢いは弱い。

 需要の停滞は企業の設備投資の減少につながり、固定資産投資も鈍化した。度重なる金融緩和にもかかわらず7月の新規人民元建て銀行融資は前月比約88%減少し、15年ぶりの水準に落ち込んだ。

 現在、中国政府は、市中の商業銀行に不動産や国有企業などに対する融資を増やすよう指導している。しかし、不動産市場の底が見えないため、民間企業は人員採用や設備投資を増やすことが難しい。若年層を中心に中国の雇用・所得環境の悪化懸念は高まっている。