ウクライナ軍によるロシア・クルスク州への侵攻は、単にロシア軍の侵攻を覆そうとする大胆な試みではない。この越境攻撃によって、核保有宣言国が他国による侵攻と占領に初めて直面している。核エスカレーション理論では過去数十年間、核保有国への攻撃はアルマゲドン(世界最終戦争)を引き起こすリスクがあるため、核保有国はほぼ攻撃されることはないと想定されてきた。イスラエルやイラン、北朝鮮、リビアといった比較的小規模な国は、自国より大きくて軍事力で勝る敵国による攻撃を抑止するために、核兵器の開発を進めてきた。核保有国同士でも小競り合いはあった。インドと中国・パキスタンとの間では国境紛争が発生してきた。昨年10月にはパレスチナのイスラム組織ハマスが、核保有国だと広く考えられているイスラエルを襲撃した。しかし概して核保有国は、当事国が全滅するかもしれないという脅威によって大規模な攻撃から守られ、核保有国間の平和が保たれてきた。
ウクライナ「逆侵攻」で試される核抑止論
ウクライナがプーチン氏のレッドラインを試す中、核エスカレーションに関する冷戦時代の理論が再考されている
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