西武ホールディングスの再上場問題で、大株主のサーベラス・グループが、完全に牙を剥いた。株式公開買い付け(TOB)による取得目標の上限を36.4%から44.7%に引き上げ、推薦する取締役を3人から8人に増やし、加えて監査役を2人送り込むことで、実質的な経営権掌握を図るものだ。
サーベラス側はあくまでも友好的な提案と主張しているが、喉元に突然、ナイフを突き付け「さあ、友達になりましょう」と言っても信用されるはずもない。西武が「一層強い反対」と表明したのもうなずける。
西武が4月12日に関東財務局に提出した「意見表明報告書」を見ると、今回の問題は西武1社にとどまらず、資本市場の公平性に一石を投じていることがうかがえる。
カギを握るのは、再上場準備を進めているさなかの昨年10月12日付で、サーベラスのCEOで最高権力者のスティーブン・ファインバーグ氏が後藤高志・西武ホールディングス社長に送ったレター。不採算路線の廃止要求や球団売却の検討要求などの“経営改善策”が盛り込まれているものだ。詳細は週刊ダイヤモンド4月6日号で報じているので割愛するが、意見表明報告書はレターの文面の一部をそのまま抜粋し引用する、異例の中身となっている。
とりわけ目を引くのは「サーベラス・グループの情報開示に対する不適切な姿勢」という反論だ。レターには「品川及び高輪については、西武の事業計画における資産のEBITDA及び将来の開発に関する高次元な詳細……が開示され、投資家に対して、適切及び明確に提供される必要があります」と明記され、具体化していない開発計画を開示することで、サーベラスが上場時の株価をつり上げようとしていたと非難している。
サーベラス側は当初、本誌の取材に対し、レターそのものについて「そんな文書があるなら見せてほしい」(代理人の弁護士)と存在を否定。その後、「経営課題を列挙したにすぎない」(同)とスタンスを変え、ついには「あくまでも中長期的な検討項目の一つで、実行を提案したわけではない」(4月2日の回答)と後退している。