ブロック経済は戦争へのカウントダウン
ここで、保護貿易の中身について、ちょっと説明しておこう。まず関税とは、政府が取るショバ代みたいなものだ。つまり、「うちの国で商売させてやるんだから、政府にショバ代払え。金額は、商品一個売るごとに、その価格の○○%」みたいな取り方だ。これが高ければ、他国はその国で商売するメリットがなくなって輸入品を撃退でき、自国利益が外国に吸収されるのを防げる。
また為替制限とは、通貨交換の制限、つまり、例えば円とドルの交換を禁止したり制限したりする措置だ。確かにそうなれば、アメリカとの貿易そのものができないから、もうダンピングにおびえる必要はなくなる。
このように通貨価値の混乱は、世界経済を手探りの闇の中へと追い込んだ。しかし世界は脆いね。通貨価値を測るモノサシがなくなっただけで各国は動揺し、世界貿易は、みるみる縮小したんだから。
これって、中が見えない箱に手を入れて、中身を当てるゲームみたいだ。視覚というモノサシを失った僕らはたちまちチキンになり、大福に触っただけで「ひゃあ動いた!」などと悲鳴を上げる。
しかし、貿易がまったくできないのは困る。世界経済の規模は、昔と比べて格段に大きくなっているのだから、今さら貿易がまったくなかった自給自足体制に戻ることは不可能だ。ならば各国はどうするか?
そこで出てくるのが「ブロック経済」だ。ブロック経済とは、共通通貨を使う「自国と植民地の間だけ」で行われる排他的な貿易体制のことだ。確かにこれならば「同じ通貨を使うエリアでのやりとり」だから、為替リスクは避けられる。
しかしブロック経済は、戦争へのカウントダウンに等しい。なぜなら絶対、植民地の少ない国が不平不満を言い始めるからだ。ちなみに、植民地を多く持っている「持てるブロック」の代表格は、イギリスのスターリング・ブロックやフランスのフラン・ブロック、アメリカのドル・ブロックなど。
逆に「持たざるブロック」は日本の円ブロック、さらには第一次世界大戦で敗戦国となったドイツなどは、ヴェルサイユ条約のせいで植民地すら持っていない。こりゃ、ドイツがヴェルサイユ条約を破棄して軍備増強を始めるのもわかるよ。
この後、当然日本やドイツなどの「持たざるブロック」は、植民地の再分割を求めて暴れ出し、それを止めようとするイギリス、アメリカ、フランスらとぶつかることになる。
こんな具合に世界恐慌後、“外へ外へと拡張”するのが植民地の少ない国、「持たざる国」の行動パターンね。一方、「持てる国」であるアメリカやイギリスの方は、自国と植民地のみでガッチリ結びつく「ブロック経済」で、排他的な貿易圏を形成した。この「持てるブロック」と「持たざるブロック」の小競り合いは結局どうなるのか? そう、もはや戦争しかない。