大正時代から現代まで、その時代の経済事象をつぶさに追ってきた『週刊ダイヤモンド』。創刊約100年となるバックナンバーでは、日本経済の現代史が語られているといってもいい。本コラムでは、約100年間の『週刊ダイヤモンド』を紐解きながら歴史を逆引きしていく。今回は、1965年当時、不況に陥っていた日本経済を押し上げた「ベトナム戦争特需」について逆引きしていく。(坪井賢一)

実質成長率が一桁に低迷
「昭和40年不況」の謎

 1959-1969年度のGNP(国民総生産)成長率の推移をご覧いただきたい。おおむね実質成長率が二桁を記録しているが、1965(昭和40)年が突出して低迷したことがわかる。名目成長率は二桁だが、これはインフレだったためで実質成長率は4.4%と、一桁台の前半だった。これを「昭和40年不況」という。

 昭和40年不況については次回以降で逆引きするとして、わずか1年で景気は回復し、翌1966年には二桁成長に軌道をもどし、69年まで続くことになる。

わずか1年で日本経済回復、高度成長を導いた
「ベトナム戦争特需」の背景

 なぜ1年で回復したのだろうか。1つの要因としてベトナム戦争の特需があったことは間違いない。

 フランスが支配していたベトナムへ進駐していた日本軍が1945年8月の敗戦により武装解除されると、9月にベトナム民主共和国が独立宣言する。