今月は健康増進普及月間だ。健康的な生活習慣を啓発し、各地でイベントが行われる。
生活習慣といえば食事や運動が思い浮かぶが、考え方や気持ちも心身の健康を左右する。
米国では1970年代から続く「看護師健康研究」の一環として、感謝の気持ちと全死亡、死亡原因との関連を検討している。
対象者は全員女性で、2016年に実施されたアンケート調査で感謝の気持ちを測定する「GQ-6(感謝度質問票)」に回答した4万9275人(平均年齢79歳)。
質問は次の6項目だ。それぞれ、「全く当てはまらない(1点)」から「非常によく当てはまる(7点)」で評価し、(3)と(6)は点数を逆転したうえで合算。合計点が高いほど感謝の気持ちが大きい。
(1)人生には感謝すべきことがたくさんあります。
(2)感謝していることをリスト化したら、とても長いものになるでしょう。
(3)世界を見渡すと、感謝すべきことはさほどありません。
(4)私は、広く多種多様な人々に感謝しています。
(5)年を取るにつれて、私の人生を形作ってくれた人々や出来事に、より感謝するようになりました。
(6)物事や誰かに感謝の気持ちを抱くまでには、長い時間がかかることがあります。
対象者はGQ-6回答後、19年12月まで追跡されたが、この間に4608人が死亡。死因は心血管疾患(1364人)などだった。GQ-6スコアの高・中・低で対象者を3群にわけ、宗教観などの影響を調整して解析した結果、高スコア群は低スコア群より全死亡リスクが9%低いことが示された。
死因別では心血管疾患と感謝の気持ちは明らかに逆相関し、高スコア群は低スコア群より心血管疾患死リスクが15%も低かった。一方、がんや認知症、感染症、外傷でも感謝の念は死亡リスクを下げたが、有意差はつかなかった。
人間は面白いもので、意識的に感謝の言葉を口にしたり、書き出してみると、自然に感謝の気持ちが育まれることが知られている。
今月は感謝という生活習慣を身につけてみませんか?
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)