テレビのニュースでは連日ニューヨークのリーマン本社ビルから多数の社員が私物を入れた段ボール箱を持ってリーマンに別れを告げる動画が流れていた。「明日から日本の金融市場も大変なことになる。嫌だなあ」と思った。
もう銀行は不動産業界にお金を貸さないので、「今ここにある現金」が大切になる。売れるものはすべて売り、工事を発注していたオフィスビルなどの開発案件も、違約金を払ってキャンセルしていった。
こうした状況下、当然のように「ケネディクスが危ない」と噂がたった。10月、週刊文春がケネディクスが経営危機であるとする記事を僕の顔写真入りで掲載した。当時首相の麻生太郎氏、米大統領のブッシュ氏、米財務長官のポールソン氏が居並ぶ中、僕の顔写真が許可なく掲載されていた。そしてその下のキャプションが傑作だった。
「米政府の対応次第ではクラッシュの可能性も“ストップ安”のケネディクスの川島敦社長」。事実確認のための取材も事前の断りも何もなかった。しかし、記事としてはそこそこまとまっていて、「全くのデタラメとはいえうまいもんだ」と感心してしまった。