また、ある時、大手不動産ファンドのパシフィックマネジメント(PMC)が大和証券から大型の出資をしてもらう交渉をしていたが、それが破談になったとの情報が入ってきた。

 PMCが流れたのなら逆にうちにとってはチャンスだと思い、すぐに大和証券に「PMCへの出資が破談になったのなら、そのお金をうちに回してください」と掛け合った。結果はもちろんダメだった。

 3100億円の借金返済に追われ、現預金は見る間に減っていった。ほんの数カ月前まではもっと借りてくれという態度だったのに、今やどの銀行、会社も貸してはくれなかった。

モリモトなど上場企業が倒産
格付け機関などが企業を殺せる時代

 こんな状況ではあったが、9月に保有していた老人ホーム8棟をシンガポールの不動産投資信託(REIT)であるパークウェイが買ってくれた。売買契約を交わしたのは、まだ平穏だったリーマン・ショックの前。

 経済情勢が著しく変わったのだから「契約を破棄されても仕方がない」と身構えていたのだが、きっちりと約束を履行してくれた。20億円の真水ができたので、思わず涙が出た。

 世間ではリーマン破綻前に売買契約し、決済・引き渡しは破綻後という契約がいくつもあった。たまたまそのような期日設定になっただけのことだ。