不動産デベ新序列#2Photo:Anton Petrus/gettyimages

永遠のライバルとしてしのぎを削るのが、三井不動産、三菱地所、住友不動産の不動産デベロッパー3社だ。この財閥系3社にもバブル崩壊の足音が忍び寄っている。特集『不動産デベ新序列 バブル崩壊前夜』(全6回)の#2では、バブル崩壊シナリオでの3社の業績を大胆予想。現在は3番手の住友不動産が、2社に下克上を果たすことになりそうだ。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

REIT指数がTOPIXを下回る
不動産バブル崩壊の予兆か

 2022年10月末、あるニュースが不動産業界を駆け巡った。外資系ファンドの米ブラックストーン・グループが、日本国内に保有する物流施設7物件を香港の不動産投資ファンド、ガウ・キャピタル・パートナーズに総額800億円で売却する方針を固めたのだ。

 リーマンショックを経験した日本の中堅不動産デベロッパーのある幹部は、このニュースを聞いて漠とした不安を隠せない。「リーマンショックのときも欧米系のファンドは逃げ足が早かった。ブラックストーンが売却するということは、市況が崩れるとみているのでは」。

 この幹部が半年前に感じ取った不安は、今年に入り現実となっている。不動産市況に異変が生じているのだ。

 異変とは、東京証券取引所に上場している不動産投資信託(REIT)全銘柄を対象とした「東証REIT指数」が低迷していること。つまり、これまで不動産に流入してきたマネーが、逆流し始めているのである。

 引き金となったのは22年12月20日、日本銀行の黒田東彦総裁(当時)が踏み切った大規模金融緩和政策の“修正”だ。この日を境に、金利上昇懸念を背景に東証REIT指数は下落の一途をたどっている。上昇傾向に転じている東証株価指数(TOPIX)とは対照的だ。

 東京駅近くの超高層ビル「大手町プレイス」が国内史上最高額の4364億円で落札されるなど、不動産市況の好調は、日銀の大規模金融緩和政策による歴史的な超低金利に支えられてきた側面が大きい。

 外資系投資ファンドのある幹部は「遅かれ早かれ、日銀の金融政策は正常化に向かうとみている」と明かす。日銀が大規模金融緩和政策の出口戦略に向かえば、不動産市況はピークを越えるとみる市場関係者は多い。東証REIT指数が、TOPIXとは真逆の動きを見せて下落しているのは、そのためだ。

 REITからマネーが流出すると、REITは新たな資金調達に迫られるため、新規物件の取得にも慎重にならざるを得ない。不動産デベロッパーが、保有する物件の有力な“出口”として頼りにするREITの低迷は、不動産デベロッパーの戦略をも狂わせる。

 無論、不動産市況の異変は、財閥系不動産デベロッパーの三井不動産、三菱地所、住友不動産にもダイレクトに影響を及ぼす。ましてや、不動産バブルが崩壊すれば、そのインパクトは甚大なものになり得る。

 次ページからは、ダイヤモンド編集部が予想する不動産バブル崩壊シナリオを基に、三井不動産、三菱地所、住友不動産に起きる序列大激変について解説していく。バブル崩壊で財閥系3社の明暗を分ける収益モデルの違いとは何か。