リートは「土地を買って開発してそれからテナントを募集する」といった回り道はせず、オフィスビルならテナントがきっちり入っていて、買った瞬間から確実に賃料が入ってくるビルを中心に取得するのが一般的だった。大きなリスクを取らないので経営は安定している。
しかし、ニューシティ・レジデンス投資法人は取得する予定の不動産の決済資金と借入金の返済資金の調達で行き詰まってしまったのだ。リート向けのお金ですら慎重になるほど、銀行は不動産業界への融資に慎重になっていたということだ。
この影響は大きく、不動産というだけで「危ない」という連想がつきまとうようになった。そして新興系不動産会社のリートの株価に相当する投資口価格が下げ止まらなくなった。ケネディクスのリートの投資口価格も短期間に5分の1にまで下がってしまった。
そこで、何とかしなければと伊藤忠商事に赴いた。すると当時役員だった岡田賢二さん(現・伊藤忠エネクス会長)が「自分の株式投資の決裁権限が5億円まであるので、その範囲で何とか調整してみよう」と、ケネディクスのリートの運用会社の株式を10%買ってくれた。