自由貿易を完全に適用すれば、コスト競争で不利な国の農業はなくなり、低コストでできる国の農業が残ります。低コストでできる国はどんどん増産して農地が足りなくなると森林を伐採して農地を広げていきます。FAO(国連食糧農業機関)の世界森林白書によれば、2010年から2020年にかけて減った森林面積は年平均470万ヘクタールで、日本の農地面積に匹敵する面積の森林が毎年失われています。

 ラテンアメリカやアフリカといった熱帯・亜熱帯地域の森林減少の実に7割以上が農業開発によるものなのです。言い換えれば、自由貿易を突き詰めていけば農業による自然破壊は止まりません。使える既存の農地が十分にあっても、コスト競争に耐えられなければ使われなくなり放置されるからです。

 地球にまだ未開拓のフロンティアがふんだんにあるなら、そうした方法をとるのも良いかもしれません。しかし、これ以上の森林の減少を止めたいなら、より安くするためにこれ以上農地を開発していくべきか、問われる意味はあるでしょう。