時間をもらい、インタビューをするとき、相手が男だろうが女だろうがきちんとした外見であれば、気持ちがいい。きちんとお話ししましょうという気にもなる。私が彼の立場になったとき、すっぴんの寝起き風な風情で取材に来られたら、怒らないにしても“この人には適当に話そう”と気がゆるむだろう。もっと大物にはちゃんとした格好で来るのかなと、穿った見方をするかもしれない。

 人に注意するというのは、勇気とエネルギーがいる。元来素直な先輩は、「最後まで聞いたら、なるほどなって思って謝った。言ってもらえてありがたかった」と反省していた。

 私はその話を聞いて以来、取材に出かけるときは、気を遣うようになった。が、時すでに遅し。適当な格好で臨んだ十年余は取り戻せない。数々の失礼があっても、相手は口に出さなかっただけで、嫌な思いをさせたに違いない。

 もうひとりの編プロ時代の先輩は、いつも艶やかな黒髪が美しい。冬でもなんでも、取材の前には必ずシャワーを浴び、髪をスタイリングし直すという。