先輩は、サブカル系のある文化人の男性に取材を申し込んだ。朝10時で、相手はマネージャーを伴わず約束の場所に現れた。

 どちらかといえばもともと化粧が好きでなく、つねに自然体の先輩はその日起きぬけだったこともあり、すっぴんで行った。

 すると、会うなり文化人が怒り出したというのだ。

「すっぴんで来るとは何ごとだ!取材を舐めているのか」

 いきなりの展開に、先輩は震え上がった。同時に、取材の段取りに落ち度があったわけでもなく、化粧をしているかどうかなんて関係ないじゃないかと憤りも感じたらしい。

 ヒートアップしていた相手も、だんだん落ち着きを取り戻してきた。

「マネージャーを連れていないので、ふらっと来たように見えるかもしれないけれど、僕も、取材という仕事のために気を引き締めてここにいます。仕事なら、あなたも化粧やきちんとした身なりで、のぞんでいただきたい。それが大人としてのマナーではないでしょうか」

 私は、化粧なんて関係ないだろう、これだからいまだに日本は男社会と揶揄されるんだと腹が立ったが、本質はそこではない。