プロとして仕事を全うするために
“身だしなみを整える”ということ

 私は下の子が中学生になるまで、自分に構うことができなかった。一年中デニムで、靴は履きやすいサボ。子どもの学校も取材も休日も同じだ。化粧品を買い足すことはおろか、スキンケアもろくにしない。

 10年余り、ファッション誌を1冊も買っていないのではないか。そして買わないうちに、たくさん休刊してしまった。もう一度あの時代をやり直したいと思うほど、ひどいありさまだった。

 おしゃれや自分をケアする楽しさを思い出したのは、たまたまアパレルブランドの広報をしている知人に赤いワンピースを勧められたことや、気まぐれで立ち寄った美容室でぱつんと前髪を切られたこと、「いつもデニムにサボですよね。もうお子さんも大きくて自転車に乗せるわけでもないんだし、たまにはスカートにヒールのある靴を履いたらどうでしょう」と親しい編集者に言われたことなど、複数のきっかけが重なる。それらはこれまでにも何度か書いてきた。

 ここでは、ライターの先輩の体験談を。仕事も、化粧や身だしなみなど外見に気をつけることがプロとして大切なのだと私も学んだ、忘れられないエピソードである。