定期昇給原資即ち査定替え実施に伴う所要財源は、あらゆる条件が正常である場合には、労働者の新陳代謝に伴う賃金の差額がこれに充てられ、人件費は増大もせず減少もしない。

 このことはしばしばエスカレーターの比喩をもって説明されているが、この場合はエスカレーターの自動運転を企業内労働者の新陳代謝に又エスカレーターの傾斜を基準線にたとえたのであって、個々の労働者はエスカレーターの各段階、即ち基準線の一定の所に位置し、年々職務遂行能力の上昇によって、段階を昇って行くが、最上段の労働者が企業外へ離職して行き、新たにその代りに最下段に新しい労働者が入り、エスカレーター全体いわば人件費総額は内転して常に一定であることを示している。(『定期昇給制度に対する一考察』より)

定期昇給率より高い
ベースアップ率の実現

 これほど熱心に唱道された「ベースアップから定期昇給へ」という政策がどれほど実現したのかを、数字で確認しておきましょう。