多くが50代半ばでの退職となり、再就職を余儀なくされる自衛官。30年間以上過ごした職場を離れて全く新しい環境に飛び込むことになり、給与も減少する。そのような中にあっては、第二の人生を楽しむ者もいる一方、葛藤を覚える者も複数存在する。また、民間企業の定年年齢引き上げに付随して発生した新しい問題もある。定年自衛官を待ち受ける“リアル”とは――。(ライター 松田小牧)
「自衛官の鑑」から
地方銀行の営業職へ
自衛官は、希望すれば定年退官後の仕事を自衛隊援護協会を通じて紹介してもらうことができる。2022年の防衛白書などを見ると、2021年の定年退官者は約4800人。うち、再就職支援を希望したのは3430人で、全体の7割強となる。この割合は毎年、おおむね変わらない。
再就職支援希望者のうち、自衛隊の援護によって就職が決まったのは3352人と、実に97.7%に上る。つまり、えり好みしすぎなければ、まず定年退官後の仕事を見つけられると言える。これが若年定年制を有する自衛隊の特徴だが、再就職先では自衛隊で培ったスキルとは全く違う能力を要求される仕事も少なくない。