「もしも卵胞ができていたら」
53歳で閉経するまで治療を続ける
治療のことを隠していた母親と妹にも、台湾渡航の前に告げた。母親は「そうなんだ。決めたら応援する。だけど大変だと思うよ」と淡々と答えた。妹は「大変だったって知らなくてごめん」と号泣した。
「妹は結婚してしばらくは子どもができなかったのですが、1人産んでから立て続けに計3人産みました。私も治療を受けつつ手伝いに行ったりしていたので、複雑な気持ちだったのだろうと共感してくれたんだと思います。私はなんとも思っていなかったんですけど」
しかし、その後もかおりさんは治療を続ける。
「自分の卵子では無理だと分かっているのに、もしも卵胞ができていたらと思うとやめられませんでした」
やめずに無駄金を払う方が精神的には楽だった。50代でも受け入れてくれる病院に転院をし、1回の受診で約2万円を払いながら治療を続けた。やっとやめようという気になった時に病院から、患者自身の血液由来成分を用いて卵巣機能の改善を目指す先進医療(PFC-FD)を提案されて受けることに。紹介された鍼灸院にも通い、1年が過ぎる。
最終通院は24年3月、53歳で閉経して治療を終了した。