【子どものいない人生】「なぜ母親にならなくてはいけないの?」少子化対策の“しわ寄せ”に悩む職場の女性たち写真はイメージです Photo:PIXTA

世界の先陣を切って少子化が進む日本。2050年には3人に1人が子どもを持たない時代になるという推計もあり「異次元の少子化対策」として、子育て支援や両立支援が進む。しかし「人は結婚して子どもを持つもの」という思考の裏で、そうではない生き方をする人が息苦しさを抱えていることもある。連載『「子どものいない人生』私たちの選択肢』の第1回では、時代や社会の流れとともに変化している価値観や、子どもを持たない女性たちを取り巻く状況を、データを検証しながら見ていく。(取材・文/フリーライター 柳本 操 ダイヤモンド・ライフ編集部)

「子どもを持つこと」が
当たり前ではない時代になっていく

 女性には「母親である」人と「母親ではない」人がいる。しかし「母親ではない」人の中にも、母親になりたかったけどかなわなかった、そもそも母親になろうとは思っていない、何かの理由で母親になりたくないなど、ひとくくりにはできないさまざまな経緯があることは、外側からは見えないものだ。

 このような想像力の欠如によって、私たちは気づかないうちに誰かを傷つけているかもしれない。

 1950年代から70年代にかけての高度成長期は「母親である」人が圧倒的多数だった。しかし、時代は大きく変わろうとしている。

 厚生労働省の「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は1.20で、過去最低を更新した(図1)。

 都道府県別で見ると最も低いのが東京(0.99)で、最も高いのは沖縄で1.60。人口を維持するには2.06~2.07が必要とされるため、日本の人口は今後減少が続く見通しだ。

図1 2023年の出生率は1.20と過去最低に

1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2023年に過去最低の1.20になった
出所:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」