普通の人は「ありがとう」だけを言う。では“感じのいい人”がさらに加える一言とは何でしょう?
それを語るのは、「感じのいい人」に生まれ変われるとっておきのコツを紹介する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏。職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…」と自分に言い訳したり。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないでしょう。この連載では、「顧客ロイヤルティ」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウをわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「気づかいのコツ」について紹介します。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

普通の人は「ありがとう」だけを言う。では“感じのいい人”がさらに加える一言とは?Photo: Adobe Stock

心が温かくなったとき

 これは、ある経営者の方のオフィスを訪問したときのことです。

 初めてお会いするので、私は少し緊張していました。
 ところが、持参した手土産をお渡しした際、その経営者の方はしばしパッケージをご覧になり、

「ありがとうございます。ああ、これはうちの皆が好きそうだなぁ」

 と、言ってくださいました。
 その瞬間、私の緊張がほぐれ、心が温かくなったのを覚えています

自己効力感を与える効果

 この経営者の方のように、感じのいい人は、お礼を言うとき、「ありがとう」にプラスひと言を添えることが多いです。

 例えば、ビジネスシーンで部下が仕事の完了報告をしてくれたとき、ただ「ありがとう」と言うだけでなく、

「ありがとう。助かったよ」
「ありがとうございます。早かったですね」

 といったひと言を加えている人を見かけますよね。

 こうすると、感謝の気持ちを噛みしめているように聞こえますし、温かさや親しみも加わらないでしょうか。
 関係性を深めるばかりか、部下に自己効力感を与える効果もあります

「たったそれだけ?」でOK

 こうした小さな気づかいは、ビジネスに限らず日常生活でも同様です。

 例えば、友人がわざわざ自分のために何かしてくれたとき、

「ありがとう。いつも気にかけてくれてうれしいよ」
「ありがとう。前に言っていたこと覚えていてくれたんだね」

 などと伝えると、相手だけでなく自分も心が満たされないでしょうか。

「わざわざ言わなくてもわかる」と思うかもしれませんが、言ったほうがもっとわかるはずです。

 日々のコミュニケーションの中で「たったそれだけ?」というレベルの行動こそ、取り入れることで相手に与える印象が大きく変わります。
 感じのいい人は、自然とこうした行動を取っているのです。

(本記事は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。