日本人の多くは、よその県や市がどういう事業を進めているかなんて話にあまり興味がないだろうが、実は井戸敏三前知事の時代、県庁舎を高層ビルに建て替えるという巨大プロジェクトがあった。もともと県庁舎は耐震強度が不足しているという問題があったので、だったらそこでドカンと立派な建物を建てて、県庁周辺の元町界隈の活性化もしようというわけだ。
「老朽化が進む県庁1、2号館を建て替え、1号館に行政機能を集約するほか、2号館や県民会館の跡地に高級ホテルやオフィスなどを誘致してにぎわい創出を図る。事業費は650~700億円を見込む」(産経新聞 2019年5月21日)
県政史上最長5期20年続いた井戸政権の総仕上げともいうべき大型公共事業ということもあって、県職員が一丸となって進めていた。19年9月17日、県庁舎建て替えおよび周辺整備の基本計画策定を支援する受託候補者に、日本を代表する建築家・隈研吾氏の「隈研吾建築都市設計事務所」と昭和設計、ウエスコ設計共同体を選定したと発表した。
こういう再開発事業が動き出せば、さまざまなカネが水面下で飛び交うのは言うまでもない。周辺の不動産売買が活発になる。大型工事なので入札をめぐる談合も始まる。下請けから孫請けまで準備に入る。再開発の影響がどれだけのカネを生み出すのが、幹部職員をはじめ、さまざまな人々が「皮算用」を始める。なにせ700億円のビッグプロジェクトだ。