しかし、それらの人々の苦労はすべてパアになってしまう。

 そう、21年7月に就任した斎藤知事は計画を白紙にしてしまったのである。この計画を当初のまま進めたら費用が1000億にものぼるとして、県民の理解が得られないというのだ。

 もちろん、この政治決断は「県民のため」ということでは悪くない。ただ一方で、この巨大プロジェクトでひと稼ぎしようとしていた人たちをすべて「敵」に回すことにもなってしまったのである。それは、この巨大プロジェクトを井戸知事と共に主導していた県職員幹部も同じである。

 民間からすれば、県の幹部職員はこの700億規模公共事業の「窓口」だ。決済者ともなればかなりチヤホヤされたはずだ。そんな我が世の春を謳歌していた人々が、斎藤知事になった途端、「苦情窓口」になり下がってしまったのである。

 では、そのように「天国から地獄」を味わった人は何を考えるだろうか。計画が白紙になってしまったものはしょうがないのであきらめて次へ、というポジティブシンキングの人もいるだろうが、多くは「復権」を狙う。つまり、斎藤知事を失脚させて、井戸県政を踏襲するような新知事を担ぎ上げるのだ。