「でも、若者が大志を抱いて、覚悟を決めて、誰1人として分け入ろうともしなかった道なき道を進もうと必死で頑張ってるのに、それを邪魔しないで欲しいと思ったんだよね」

 実際、大谷はライオンズとの開幕戦、8番ライトでスタメンにその名を連ねた。そして、岸孝之(編集部注/前年は防御率2.45、11勝を挙げた好投手)からいきなり2本のヒットを放つ。鶴岡はその試合の9番バッターとして、ネクストバッターズサークルから大谷のバッティングを見ていた。

「最初は見逃し三振でしたけど、2打席目にツーベースを打ったんです。3打席目には初球を振ってタイムリーも打ったのかな。相手のピッチャーが岸だったんで、きりきり舞いするのかな、なんて思っていたら、いきなりパコーンって……完璧に捉えた当たりでしたし、なんだ、コイツはって、またそこでも驚かされました」

 そして、ピッチャーとしての一軍デビューは5月23日、スワローズとの交流戦。大谷が札幌ドームのマウンドへ上がった。

 その初球、力が入りすぎて大谷はボールを引っ掛けてしまう。低めに外れたストレートが叩き出した球速は、152km。