相談者と面談をする女性弁護士写真はイメージです Photo:PIXTA

病的なまでの子への執着──。ストーカー行為に走る毒親にどう立ち向かえばいいか。法的に親と絶縁する方法は日本にはないが、法的手段を用いて親と距離を置くことは可能だ。法律事務所クロリス代表弁護士の吉田美希さんに教えてもらった。(※守秘義務の関係上、実際の事案とは一部を改変しています)(取材・文/ジャーナリスト 村田くみ)

弁護士が教える
毒親と“縁を切る”方法

「G夫さんちょっと来てくれるかな…」

 ある日ミーティングの後、女性の上司に呼び止められた。G夫さん(30代)は「上司の声のトーンから、あまりよくない知らせに違いない。今、自分が抱えるプロジェクトについて問題があったのかな?」と、瞬時に考えた。

「実はあなたのお母様が突然会社に訪ねられて、『息子としばらく連絡が取れないから会わせてほしい』と、受付の人と一悶着を起こして大変だったのですよ。もちろん、セキュリティー上、職場内にお通しできなかったんだけど、私が1階まで降りてお母様とお会いしました。まあ家庭内の問題なので立ち入ったことは言いませんが、うまくやってくださいね……」

 上司の口調は穏やかでも笑顔はひきつっていた。内心は「家庭内の問題を職場に持ち込まないで」と、言いたそうで、G夫さんはひたすら詫びた。

 その後、同僚の視線が気になって仕方がなくなり、職場に居づらくなってしまった。

「職場まで追いかけるのは稀な話ではなく、子どもに執着しすぎる毒親の典型的なパターンです」と指摘するのは、離婚や毒親の問題を扱う法律事務所クロリス(東京都豊島区)代表弁護士の吉田美希さん(39)。毒親は日常的に子どもの尊厳を踏みにじるのが特徴という。

「子どもが大人になってからも、毎日着る洋服から帰宅時間や交友関係、交際相手などに、あれこれ口出しをしてきます。さらに、ひどいことになると栄養が足りないからこれを食べなさい』などと、自分の思う通りに押し付けて、コントロールしようとしてくる親もいます」

「子どものほうが耐えかねて就職などを機に一人暮らしを始める、あるいは結婚をしてから家を出たとしても、しつこく『会いたい』と言って押しかけてくるのです。G夫さんの母はストーカーと言っても差し支えありません」(吉田さん)